あぁ。これからインタビューか。
まぁ、何を聞かれても答えは用意している。
こちらが優勢ではあるものの、うっかり口を滑らせてヒントを与えてしまってはいけないし、一応、準備は念入りに。
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インタビュアー:今回はインタビューの機会を与えてくださりありがとうございます。よろしくお願いいたします。さっそくですが、昨今の御社の業績は目をみはるものがあり、とても倒産の危機にあった会社とは思えないような状況ですね。とても驚いています。
私:こちらこそ我が社について話す機会を設けていただきありがとうございます。
業績についてですが、倒産の危機にあったというのはある意味で正しくはありません。
一部の事業部で海外投資を行っていたこともあり、為替変動により円建てで大きな損失が出てしまっただけです。それ以外に蓄えがあるため、国内の取引にはまったく支障はありませんでした。
我が社は国内で製造し、国内で販売を行っているので本業に支障はありません。赤字の額が大きかったので、噂が独り歩きしただけでしょう。
インタビュアー:なるほど。それでは、今は為替が戻っているので、それで利益が大幅に出ている状況なのでしょうか?
私:いえ、それだけではありません。我が社のライバル会社は業界第1位のA社ですが、実は、もう何年も前から業界第3位のC社との関係を構築していているんですよ。あまり話題になっていないですが、C社のある国で新規事業を立ち上げ、その業績が順調です。また、この事業のビジョンに共感をもつ国が多く、各国から資金援助を得ている状況です。
インタビュアー:それは凄い!ビッグニュースですね。勉強不足ですみませんでした。想像するに、かなりの資金が集まっているのではないでしょうか?
私:そうですね。詳細はお伝えできませんが、かなりの額です。それに、まだこれから賛同してくれる企業が増えそうなので・・・。早かれ遅かれ我が社の業績はA社を追い抜くことになるでしょう。
インタビュアー:そんなことになっているのですか。今日のインタビューでは驚かされるばかりです。ただ、A社は全世界で事業を展開しており、失礼ながら御社がすぐにA社の業績を追い抜くというのは想像できないのですが、現実的にそのようなことは可能なのでしょうか?
私:あなたはご存知ないかもしれませんが、現在、A社のシェアは全世界で45%しかありません。残りのほとんどを我が社とC社がシェアしています。我が社が25%、C社が15%です。我が社とC社はこれからもお互いに協力関係を築いていく予定です。また、最近は他社からも協力してほしいとのオファーが来ています。
インタビュアー:なるほど・・・。だいたいの未来像は確認できました。私の中でA社のイメージが強かったので、現状、そのようなことになっているということも驚きでした。そう言えば、A社に勤務する友人が、ボーナスが減ったとか、人手不足で困っているとか言っていたような気がします・・・。
本日はそろそろお時間も来てしまいましたので、私からの質問は以上とさせていただきますが、何か視聴者に伝えておきたいことはありますか?
私:そうですねぇ・・・。これから我が社は他社と協力しあいながら大きく発展していくでしょう。人類の未来のためにも、我が社としてはA社ともぜひ良い関係を築きたいと思っています。言葉を選ばずに言えば、A社のしていることは時代遅れです。このままでは顧客だけでなく社員も離れていくことになるでしょう。もし、これを視ているA社の担当者の方がいらしたら、ぜひご連絡を。
インタビュアー:なっ・・・。少し驚きの展開ですが、今後が面白くなりそうですね。人類の発展のためにもより良い未来が訪れることを祈っています。本日はお時間をいただきありがとうございました。
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5年後・・・
あれからA社からの連絡はなく、インタビューで話をしたとおり我が社が世界の頂点に立つこととなった。
業績は絶好調だ。
今話題の会社、就職したい会社、規模の大きな会社、世界的な会社・・・
企業として全ての名声を手にいれた。
古い慣習の残る業界に一石を投じたという自負もある。
私自身は忙しすぎる時期がすぎ、少し落ち着いて物事を見ることができるようにもなった。
今はとくに望むものもなく、このまま穏やかに最後を迎えたいと考えている。
プルルルルルル・・・・
「はい。え、何だって!?C社がA社に買収されただと!?」
戦いは終わらない。