街と自分の10年:変わりゆく風景と心境の変化

小説(フィクション)

ここもホテルになってしまったのか・・・。

10年前の面影はもうない。

街の様子がずいぶんと変わってしまった。

10年前は怪しい外国人とか、呼び込みのお兄さん、ボロボロの服で道に寝ているおじさんが沢山いた。

独特の空気と匂いを感じながらこの道をよく歩いたもので、なんだか懐かしい。

この街の特徴と言えば独特の空気の中に一流ブランド店が立ち並ぶ、カラフルなマーブル模様のような景色だった。

10年の時を経てマーブル模様の街は大きく変わった。

独特の空気はなかなか消えないものの、全てが近代化され、殺風景と欲望が入り乱れたよなマーブル模様の街は、お行儀のよい正方形が並んだチェック模様のような様相になった。

入り乱れたカオス感はなくなり、お行儀のよい街へと変貌を遂げたのだ。

待ちゆく人も怪しい外国人からお上品な外国人へ変わったし、呼び込みのお兄さんは一流ホテルのドアマンに変わった。ボロボロの服で道に寝ていたおじさんはもういない。

あの人たちはいったい何処へいってしまったのだろうか?元気なのだろうか?

といらぬ心配が頭をよぎったが、きっとどこかでまた上手くやっているのだろうと思うことにした。

街の変化を横目にふと自分は10年前とどう変わっただろうかと考える。

まず、体重は増えたし、白髪も増えた。それに健康診断の結果が全てAではなくなった。

反対に、収入はあの頃の倍になったし、精神面に置いてはあまり人のことが気にならなくなった。生活も規則正しくなって安定している。

昔はかなり不安定だった。し、もっと尖っていた。

もっと上に行きたかったし、どこまでも上にいきたかった。

今はほどよい負荷の中で毎日を楽しく過ごしたい。と思ってる。

街の様子も変われば自分も変わっていた。
いつのまにか自分自身もマーブル模様からチェック模様のような人間になっていた。

なんだか浦島太郎になったような気分だ。

これからまた街の様子も変わっていくだろうし、私自身も変わっていくのだろう。

10年前は行くのを躊躇った高級カフェで休憩でもしようか。

「いらっしゃいませ。素敵な時間をお過ごしいただけるよう私がエスコートさせていただきます。まずはお席の選定から・・・」

あぁ、高級カフェの過剰な接客にはまだ慣れない・・・。