【本当の自分】子供からの言葉に気づかされた自分のエゴ

小説(フィクション)

「あッはははは・・・・」

さっきまでシリアスな心境だったのに、心の底から笑う。演じ切る私。

「いいね~!すっごく可愛い!」
「可愛い!」

私のテンションを上げるように周囲から言葉が飛び交う。

キー・・パシャ。パシャパシャパシャ・・・

「はいOK~!」

3、40代女性向け雑誌Melonの一コマが完成した。

ふと、今朝、子供から投げられた言葉が頭をよぎる。

「ママって、外面ばっかり。もっと普通のママが良かった。」

どうやら子供は私が雑誌に出ていることで学校で周りからいろいろと言われているようだった。
いじめられているとかではなく、単に羨ましいとかそういう感じらしい。
性格的に内向的な子なのでそれが嫌なんだとか。

あと、

「皆、ゆなが好きだから仲良くしてるんじゃなくて、ママが雑誌に出てるから仲良くしてるんだと思う。ゆなはゆなでいたい。普通の友達が欲しい。」

とも言っていた。
私はあんたの学費を稼ぐために頑張って働いているんだからそれぐらい我慢して。とは言えなかった。
なぜならゆなの言うことは図星で、モデルの仕事は自分のエゴを満たすためでもあったから。

昔からやりたかった仕事。人が憧れるような夫がいてやっとこの歳になって手に入れたモデルの仕事。キラキラしていて沢山の女性から称賛の目で見られる。華やかな世界。美容外科やエステだって毎週通って、体形維持のためにジムに行って、家でもトレーニングしている。それにブランドものだってもらえるし。この仕事だけは絶対に手放したくはない。

ゆなだっていつかはわかってくれるはず。それにキラキラしたお母さんってやっぱり素敵じゃない?
皆から憧れられて何が不満なの?


今日は撮影でとある田舎街に来ることになった。
どうやら都会から離れて田舎暮らしをしているモデルの子がいるのだとか。
今回は雑誌Melonとのコラボで田舎暮らし特集をするらしい。
「都会から田舎の友人の家に遊びに行く」というコンセプト。

ミーンミンミンミンミン・・・・・

セミの声が響く中、生暖かい風が吹いて、田んぼの稲がゆれている。

なんとものどか。
田舎暮らしモデル?りかさんとの撮影の合間、育児の話になった。

田舎で暮らしていて親がモデルの仕事をしていたら、子供がいじめられない?とかいろいろ言われない?とか気になることが沢山あった。

りかさん曰く、どうやら最初はいろいろあったらしい。
でも、地域のイベントやボランティアのような活動をしているうちにそんな声はなくなって、今は親子ともども不便ながらも自然にあふれるこの環境が気に入っているのだとか。

子供も地元の子たちと毎日楽しく遊んでいるらしい。

りかさんと話をしていると、とてもナチュラルで、自然体。あるがままだった。農作業をしているからか日焼けをしているものの、体系も筋肉質で引き締まっていて健康的。決して超美人というわけではないけれど、笑顔が素敵だからか、美しかった。
もちろん雑誌に写るりかさんからもナチュラルさが伝わっていて、隣に写る自分がハリボテのように感じてしまった。

私の周りにはハリボテのような人しかいない・・・。
なんだか急に自分の存在が恥ずかしくなった。

ゆなのほうが大人だった。全部わかってたんだ。

本当の私ってどんなだったかな・・・。